2014/10/06

よく言われている3つの理由 (vol.11)

さて、
この間は、Homelessだった人の過去の話やFirst Nationのことについて大まかに書いたが、
彼ら以外のHastingsにいる人たちが、減らない理由とドラッグやアルコール依存性が多い理由について

前回書いたように、街の中心だったEast Hastingsが、衰退して行き、Homeless問題が表面化してきたのは、1980年あたりから、それでも1999年は600人以下であったが2002年に1121人になり、2005年には2174人になった。(3年ごとに調査されている。調査毎にだいたい倍ずつ増えてることになる。)

では、なぜこんなにも増えたのか

よく言われている理由で、3つある
 
一つ目は、収入の欠如
二つ目は、Vancouverの家賃の高騰
三つ目は、精神病院の閉鎖と医療制度の改正
 
それ以外に考えられるのが、
負の連鎖
ドラッグの取り締まりの緩さ

言わずもがな、複数の理由が複雑に絡み合っているのだが…

一つ目と、二つ目に関しては、どの国の都市部でも同じことが起きているのではないだろうか…
日本でも同じことが言える

Vancouverの場合、土地と家賃の高騰は、1980年代に政府が住宅金融公社の資金をカットしたことで手頃な住宅が激減したことと、
それと同じくして、民間セクターの住宅市場が急激に増加し、低所得者は蚊帳の外で、不動産がバブルのように上がり始めたのが理由

家賃の高騰は、働いていたとしても生活していくのに十分な収入が得られないという人を大量に生むことになった

これは2010年の調査だが
1ベッドルームのApartment(日本のアパートとは違うが、ワンルームマンションみたいなイメージ)平均の家賃が月額$950近く。
例えば、時給$10で週に40時間働いても税金や生活費などその他の諸費用を払う前に、家賃だけで収入の半分以上を持って行かれることになる。

その上、失業率の多さと、何よりも、就業率の低さがのしかかる
例え、それなりの学歴を持っていても、それに相当する職につくのが難しかったりする
また、パートタイムの様な仕事はあっても、フルタイムの仕事がなかなか見つからなかったり、
移民の国特有の問題で、安い労働力として移民や就労ビザ保持の滞在者が雇われて、本来のCanadianが辞めざるを得なくなるというのもきく(そういうこともあり、移民法が今年の6月も変わったのだが、毎年、厳しくなってきている)

三つ目が、少し複雑なのだが...

HastingsにいるHomelessの内の40%以上が、精神疾患をもっている

1876年、Victoriaの州立精神病院が入院患者の増加に応じて、BC本土に移転することになった。
それに伴い1913年、Canada第二の規模を持つ精神病院のRiverview hospitalがCoquitlamに開設された。
約1000エイカーの土地が用意され、病院施設の治療の一環として植物園や農場も併設されていた。
Riverview Hospital Canada History
(航空写真:建物の一部)
 

(East Lawn Building : 女性専用入院施設。当時の写真)
 
一時期は、1800人収容限度に4300人近くの患者がいた時もあったという。

1953年あたりから、向精神薬の導入と外来診療への移行により、患者数とベッド数が減少していった

1960年代に入ると、規模の縮小化と脱施設化の動きが出てくる

1970年代から1990年代にかけて、どんどんベッド数を減らして、施設の小規模化を急速にしていった
4000ベッドから1800ベッドへ
そこから2000年代に入り800ベッドへ

そして、2012年最後の患者の移動がされ、完全にRiverview hospitalが閉鎖された

なぜ、このように巨大な州立の精神病院が縮小の末、閉じることになったのかというと、
 
高騰する医療費の問題などが絡んでくる
BC州には州立の精神病院がRiverview hospitalしかなく、増え続ける患者の対応策として、
患者を地域で支える精神保健システムを作ることが、州の財政上の解決策であると考え、
大幅の予算を病院から地域システムに転換してベッド数を削減していった。
 
また、収容の場所と化した巨大施設に対する反省から患者の人権や人間的なケアを模索する動きが出てきた。
また、当時開発された向精神薬に対する楽観視、カナダ精神保健協会の主張した心理社会的リハビリテーション実践としての地域ケアなどの取り組みが出てくる。

だが、1970年代に精神保健センターを拠点として地域ケアが展開され、患者の地域生活は維持されるはずだったが、
当時の精神保健政策立案者も精神保健専門家も、医療以外に地域で生活を維持する精神障害者を支える社会的資源の整備やサービスの調整、住宅の確保、余暇、雇用、生活の組み立てや具体的に支援を提供するスタッフが必要であることを十分認識していなかった。

これらの社会資源の未整備状態が入院の頻回やホームレスを生み出したと批判されている。

 
Hastings st. 
 
この三つ目の理由に関しては、Homelessの人口を増やすということ以外に
薬物中毒者とアルコール中毒者の問題にもつながってくる
また、それに伴う事件も多く起きている
 
年間、バンクーバーの大きな精神保健センターには、
115人の常勤のスタッフにたいして、4000人以上の患者が緊急搬送されてくるという
その理由のほとんどが、精神疾患と極度な薬物中毒であるといわれている
 
住所不定や自分で薬をコントロールできないで、Hastingsに集まってくる精神疾患の人たちは、いとも簡単に薬物中毒に陥ることになる

2013年、これらの問題の解決策として、Riverview hospitalの再オープンの話も持ち上がったが、それが、Homelessの直接的な解決にはつながらないと却下された

余談だが
下の写真は、閉鎖されてからの病院内部の写真
廃墟具合と精神病院という背景から、心霊スポットとして有名らしい
この病院は、50本以上のテレビや映画の撮影にも使われている
(The X-Files”でも使われている)






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The Dependent Magazine より



 

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