2016/03/12

年内にまとめて短い読書感想文(本当は年末には書いていたが、更新していなかった。。。今更)

●『11人いる!』 萩尾望都
(2015年10月会津旅行中 漫画)

こないだ読んだ『トーマの心臓』よりも、自分にとっては好みの話。40年前くらいに連載していたSF(少女)漫画。本格SFを描いているのだろうけど、全体的に「優しさ」がベースになっているので、いちよサスペンス(+ややロマンス)だが読んでいて心地がいい。心理・人間描写、政治的なことなど盛り込まれていて内容は薄くない、というかむしろ文字数とコマ数から言えば、かなり量が多く、大満足である。
読んだ人はみんなフロルの魅力にとりつかれるだろうけど、本当にかわいすぎる・・・
巻末エッセイは、中島らもさん。




●『猫を抱いて象と泳ぐ』 小川洋子
(2015年10月 )

好きな作家の一人である小川洋子さん。『博士の愛した数式』は映画化されて有名になったけれども(映画は観ていませんが)、完全な独断と偏見から言うと、村上春樹と小川洋子の作品は、邦画にはちょっと向いていない気がする。この空気感と質感は表現しづらいのではないのかな。
特に今回の小説は、ティムバートン監督でフランス映画風に映すと想像しやすい気がする。
どこか俯瞰的でありながら、人・モノに限らず、偏執的な愛を描くのに長けすぎている。そして、これは私だけかもしれないけど、うまく言えないのだか触覚や聴覚が敏感になる文章。
彼女の本を読むと頭の中で再生された世界が、こびりついてしまい、断片的であれすごく感覚的に記憶にとどまってしまう。ブラフマンもイービーも、そして、今回のアリョーヒンも、記憶に住みついて愛してやまなくなる。
"詩を語り、音楽を響かせ、星座を描いてくれる"というのが、最大級の美しさに対する賛辞であるというその感覚が、小川洋子さんの作品を好きな理由の一つだと思う。
上質なとても良い本でした。


●『abさんご(毬 タミエの花 虹)』 黒田夏子
(2015年11月~移動中に)


装丁が変わっていた。
両面がオモテとなり、あとがきがなくて、なかがきがある。
本来は、裏となる側から、横書きのabさんごがはじまり、表となる側から、三編のタミエの話がはじまる。
芥川賞を受けられた時は、年齢(75歳)と経歴と文体で話題になったのを覚えていたが、たまたま手にしたので読んでみる。
受賞作のabさんごに関してのみ、文体が特徴的で、極力使われる平仮名と極力使われない固有名詞による回りくどさと英文用の句読点と改行法を使用している。
難解だと言っていた人がいたが、読み方に慣れれば内容的には難しくもなく、逆に感覚に近い分、想像しやすくさえ感じる。固有名詞に頼らないと、言葉は美しいものだなと度々感じるところがある。
たとえば、

"死者が年に一ど帰ってくると言いつたえる三昼夜がめぐってくると,しるべにつるすしきたりのあかりいれが朝のまからとりだされて,ちょうどたましいぐらいに半透明に、たましいぐらいの涼しさをゆれたゆたわせた."
(本文から抜粋)

といった具合である。
でも、横書きなこともあり、読みづらさは、いなめない。
横書きって、ネットやメールで慣れていそうで、全く慣れぬものだな…

タミエの三編は25,6歳に、abさんごは75歳に書いたものらしく、間には、50年の年月があることに驚く…。
文字列は、全く違えど、やはり文章に似た空気を感じる、それが半世紀の年月がたてども、その人のまとうものが変わらないという証拠なんだなと思う。
タミエの話を読んでいて感じたのだけど、幼さゆえの残酷さや卑屈さのようなものがあるのだが、これは、幼年期の一過性のもので済めば良いが、成長しても残っていて、尚一層深さを増す場合はどうしたらよいのだろう。


●あとは、読み途中の分と諸々の資料や、参考文献などをちょこちょこ読んだかな…
 

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